CD『glare grey blue』全曲解説
CDに収録した各曲について、作曲者による解説コメントをご紹介します。
1. glare grey blue(太田 剣)
曇り空が眩しい。晴れの日よりも瞼が重くなる眩しさに運転中はいつもサングラスが要る。太陽の光と灼熱の温度を堰き止めている真綿のオブラートのような雲は、曇天という言葉とは裏腹に、触ったら火傷しそうなくらい熱いのかもしれない。そんな曲です。
2. 絹と砂(秋田慎治)
ピアニストだから好きなのか、好きだからピアニストなのかよくわからないけど、和音が好きです。その移り変わりや繊細な表現が好きです。以前は難しい事にものめり込んだけれど、この曲くらいのハーモニーのバランスが今の自分が好きな感じかな。絹の持つきらびやかでしなやかな感じ、砂のようにさらさら流れるような、そんな曲になりました。
3. FUMOTO(土井孝幸)
知り合いや友人の訃報を知ることが増える年齢になってきました。そのことを暫く経った後に知ることもあります。SNSやインターネットで無数の情報を共有する社会となった今、そんなちょっとしたタイムラグが余計にショックだったりします。そんな気持ちを彷彿とさせた、悲しげなメロディ。タイトルは友人の名前です。
4. Humming an old Song(太田 剣)
老健施設でソロ演奏をしたときのこと。平均年齢90歳くらいの方々の心に響く曲って何だろう、と名だたる有名曲を演奏したなか『僕の故郷、渥美半島に流れ着いたという逸話の曲です』と『椰子の実』を吹いたら、皆さんがメロディをサックスに合わせてハミングで歌いだして。ずっと心に残る旋律に思いを馳せてみました。
5. ECHOES(太田剣)
自然の中に発した何かの音がどこかに反射することを繰り返す、こだまのようなリフレイン。そこに木製の箱のような胴体から弾き出される、問いかける言葉のようなプリミティブな歌。真鍮の筒から出る応えの文章は長く現代的で、その先にあるのは開化か、退廃への序章か。そんなイメージをまとめた曲です。
6. Ophelia(秋田慎治)
そこにいるようないないような フワフワの雲にいるような水の中を歩くようなつかめそうでつかめなくて時が経っているようでまだそこにいるようなそんなとりとめのない曲に見事にあるお客さんがタイトルをくださいました。
7. Solitaire(秋田慎治)
デビュー作”moments in life”の最後に収録した曲。その時はあえてアドリブもやらずメロディだけをソロピアノで録音しました。その続きがあれから18年経って今ここに。ひとつだけの石をあしらった指輪やイヤリングをSolitaireって言うんだって。
8. a draw in a Kindergarten(太田 剣)
部屋の窓の向こうは幼稚園の園庭で、運動会の練習中。
保育士さん『青組さん〇〇点!』こどもたち『ワーイ!』
保育士さん『黄色組さん〇〇点!』こどもたち『ワーイ!』
保育士さん『よって青組さんと黄色組さんの引き分けです!』こどもたち『ワーーーイ!!』
引き分けで良いよね。(draw=引き分け、風景)
9. make me forget you(秋田慎治)
この曲を作ったのは2002年頃?まだNYから帰って間も無く、トラックメーカーの仕事も多くしていた頃。実は昨年出した”Sincerely Grateful”に収録しましたが、前作の剣ちゃん同様、バージョン違いという事でお二人にご一緒いただき、また違う顔をみせた曲になりました。
10. Color Coordinator(土井孝幸)
癌の影響で視力を失いつつあった大学の後輩が「病を克服して目が見える様になったらカラーコーディネーターになろうと思うんです」と言いました。その電話の数年後に彼は他界。「彼にはどんな色が見えていたのだろう」そんな私の想いを曲にしました。バラードのつもりで書き始めましたが、medium swing にしたら実に k.a.t. らしい雰囲気に。ボーナストラック感覚で聴いていただければ幸甚です。
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